第3話『 素材の魅力 』
現在、企画チームは24AWの素材を選定する作業を進めています。
私は服作りの全工程を知る為、いつも生地屋さんとの商談には同行するようにしています。 ディレクターは、何種類かの見た目は同じ黒色の素材を、時には1時間に300枚くらい触って、『これがいい!』とピンッときた1枚を選ぶんです。どうやらディレクターの指先には、未知の特殊なセンサーが備わっているようですね。私にも触ってみるよう促されるんですが、どれをどう触っても同じに感じます。沢山触れば触るほど、ますます同じに感じます。私も生地の違いが分かるようになったらかっこいいなとは思いますが、それはまだまだ先のようです。 そんなある時、タテ糸がシルク、ヨコ糸がポリエステルの生地を何種類か見せてもらいました。その中に、原料が同じはずなのに触り心地が全く違うものがあったんです。私の指先のセンサーも、少しずつ目覚め始めたのかも知れません。とにかく不思議に思ったので、あとでディレクターに聞いてみると、つまりはこうゆうことらしいです。
――― タテ糸とヨコ糸の太さと密度を変えることで、素材の表情と厚みは変わる。この糸選びが出来上がりを左右するので、その糸選びと密度(打ち込みの本数)で、肉厚を想像しながら決めていく。これが、綾織や平織、繻子織などの組織と連動していて、どうゆうデザインやアイテムを作りたいかで決めている。 それは、生地の産地(尾州、近江、桐生浜松、岡山、和歌山)など、それぞれ得意な産地に依頼するが、同じ産地でも生地のメーカーで風合いは変わってくる。
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皆さんはご存知でしたか? 各メーカーの得意な加工方法で生産された、よりいい素材を、提案された中から徹底的に厳選して、『今シーズンはこの素材でこのアイテムを作ろう』とディレクターの頭の中で決まるんだそうです。 覚えるのは大変ですが、そういったことを色々理解した上で素材を見ていくと、何だか結構楽しくなってきます。 楽しいと言えば、多くの生地屋さんは、私が普段行くことのない場所にあったりするので、商談が終わった後のランチも密かに楽しみにしています。今日も商談終わりに、恵比寿にあるディレクター行きつけのレストランに寄って、とっても美味しいパスタを頂いてきました。これで午後も頑張れそうです!